2021年10月13日水曜日

3次方程式の3つの解が全て実数解である条件

これは、ここをクリックした先のページの問題の解答です。

【課題】以下の3次方程式(式(1))の3つの解が全て実数解(3つの異なる実数解)である場合の条件を導き出せ。


(課題おわり)

【解答1】
《式(1)の関数f(x)の3次方程式の解を求める問題は、変数xを以下の変数tに変換して関数f(x)を、以下の式(2)の形の関数g(t)に変換して解くのが定石である。》
 その関数g(t)の表すグラフY=g(t)の形を描くと以下の図が描ける。


y=g(t)のグラフが上図の様に2つの極値(極小値と極大値)を持って、極大値の点のy座標が正であり、極小値の点のy座標が負であれば、グラフは t 軸と3つの異なる点で交わる。その場合に式1の解が、その3つの交点の t 座標を表す。
 先ずは、以下の計算により、関数g(t)の係数を導き出す。


 これで準備が出来たので、グラフが2つの極値を持つ条件を導き出す。それは、関数g(t)を微分した関数g'(t)が0になる点が2つあることである。その2つの点の t 座標は方程式(3)で求められる。方程式(3)の解は以下の式で計算できる。

方程式(3)が2つの解を持つ条件は上の式(4)である。そして、式(4)の条件が成り立つ場合の方程式(3)の解の t の値は、以上の2つの値、t1とt2である。

この2つの値の t 座標の点のy座標の値が、先頭の図のグラフの極値のy座標が負と正の値であれば、グラフは t 軸と3つの異なる点と交わる。また、この2つの点のy座標の積が負である条件だけでも t 軸と3つの点で交わる。そのため、この2つの点のy座標を計算して、それらの積を計算することで、それを判別する条件式を求める。

先ず、g(t1)を計算する。


g(t2)も、同様にして、以下の式(6)で表せる。

この2つのy座標の積に、以下のように負の係数を掛け算した値が正になることが求める条件式である。

この式(7)が、3つの解が全て実数解である条件である。(なお、D1が0になることが3次方程式の重解を調べる判別式である)式(7)をよく見ると、式(7)が満足されるならば、 式(4)で表された前提条件(s>0)も満足される事がわかる。

 判別式(7)の左辺D1 は、元の式(1)の係数で表し、更に係数を変えると式(8)であらわすD2 になる。この式(8)=D2 の値が正であることが、3次方程式(式(1))の3つの解が全て実数解(3つの異なる実数解)である場合の条件である。
 式(8)=D2 を27で割り算してD3 を得る。

この式(9)が、3次方程式(式(1))の3つの解が全て実数解(3つの異なる実数解)である場合の条件である。
(解答1おわり)

【解答2】
 解答1の定石の解き方をしない場合には、以下のように計算が面倒になる。

 この3次方程式の関数f(x)の表すグラフY=f(x)の形を描くと以下の図が描ける。

y=f(x)のグラフが上図の様に2つの極値(極小値と極大値)を持って、極大値の点のy座標が正であり、極小値の点のy座標が負であれば、グラフはX軸と3つの異なる点で交わる。その場合に式1の解が、その3つの交点のx座標を表す。
 そのため、先ず、グラフが2つの極値を持つ条件を導き出す。それは、関数f(x)を微分した関数f'(x)が0になる点が2つあることである。その2つの点のx座標は方程式(2)で求められる。方程式(2)の解は以下の式で計算できる。


この方程式(2)が2つの解を持つ条件は以下の式(3)である。

この式(3)の条件が成り立つ場合の方程式(2)の解は、以下の計算で求められる。

この解のx座標をx1とx2として以下の式で表す。

この2つのx座標の点のy座標の値が、先頭の図のグラフの極値のy座標の値である。その2つの点のy座標の値が負と正であれば、グラフはX軸と3つの異なる点と交わる。また、この2つの点のy座標の値の積が負であるという条件だけでも、グラフはX軸と3つの点で交わる。そのため、この2つの点のy座標を計算して、それらの積を計算することで、それを判別する条件式を求める。

先ず、f(x1)を計算する。




f(x2)も、同様にして、以下の式(5)で表せる。

この2つのy座標の積に、以下のように負の係数を掛け算した値が正になることが求める条件式である。

この式が、3つの解が全て実数解である条件である(解その1)。
 次に、この式D1を展開した式を計算する。


この計算の結果、以下の式(7)の解(解その2)が得られた。


この解の式(7)は、解その1の解の式(9)と同じである。解その1の式(7)を見ると、解その1の式(4)で表された前提条件は、解その1の式(7)が満足されるならば、その式(4)も満足される事が示せた。

よって、解その2の式(7)は、3次方程式(式(1))の3つの解が全て実数解(3つの異なる実数解)である場合の条件である。
(解答2おわり)

(補足)以上のようにして、高校数学の範囲で、かろうじて、3次方程式の解の判別式を導き出すことができた。しかし、この問題は、このようにして高校数学の視点に基づいて解を求めるよりは、大学数学の、新たな視点から見た判別式の概念を用いて解を得る方が良い。その方が数学の視野が広がるからです。
 ここをクリックした先の「三次方程式の判別式の意味と使い方」のサイトに、その新たな視点から見た判別式の概念が説明されている。

【問題1】以下の3次方程式(式(1))の解が3つの異なる実数解になるkの値の範囲を求めよ。

(問題1おわり)

【解1】
式(1)の関数f(x)の3次方程式の変数xを以下の変数tに変換して関数f(x)を、以下の式(2)の形の関数g(t)に変換して解く。
 その関数g(t)の表すグラフY=g(t)の形を描くと以下の図が描ける。


y=g(t)のグラフが上図の様に2つの極値(極小値と極大値)を持って、極大値の点のy座標が正であり、極小値の点のy座標が負であれば、グラフは t 軸と3つの異なる点で交わる。その場合に式1の解が、その3つの交点の t 座標を表す。
 先ずは、以下の計算により、関数f(x) を関数g(t)に書き換える。


 これで準備が出来たので、グラフが2つの極値を持つ条件を導き出す。それは、関数g(t)を微分した関数g'(t)が0になる点が2つあることである。その2つの点の t 座標は方程式(3)で求められる。方程式(3)の解は以下の式で計算できる。

方程式(3)が2つの解を持つ条件は上の式(4)である。そして、式(4)の条件が成り立つ場合の方程式(3)の解の t の値は、以上の2つの値、t1とt2である。

この2つの値の t 座標の点のy座標の値が、先頭の図のグラフの極値のy座標が負と正の値であれば、グラフは t 軸と3つの異なる点と交わる。また、この2つの点のy座標の積が負である条件だけでも t 軸と3つの点で交わる。そのため、この2つの点のy座標を計算して、それらの積を計算することで、それを判別する条件式を求める。

先ず、g(t1)を計算する。


g(t2)も、同様にして、以下の式(6)で表せる。

この2つのy座標の積に、以下のように負の係数を掛け算した値が正になることが求める条件式である。

この式(7)が、3つの解が全て実数解である条件である。式(7)を見ると、最初に得られた式(4)で表された前提条件は、式(7)が満足されるならば、その式(4)も満足される事が示せた。

 判別式(7)の左辺D1 は、元の式(1)の係数で表し、更に係数を変えると式(8)になる。この式(8)のD2 の値が正であることが、3次方程式(式(1))の3つの解が全て実数解(3つの異なる実数解)である場合の条件である。
 式(8)を更に変形する。

この3次式p(k) が正になれが式(8) が成り立つ。
以下で、この3次式p(k) を因数分解する。(この設問は、この3次式p(k) が容易に因数分解できるように、問題が作られている。通常の場合では3次式の因数分解は容易ではない)
このp(k) の式にk=1を代入するとp(1)=0になる。そのため、3次式p(k) は、(k-1)で割り切れることがわかる。

この式(10)が、3次方程式(式(1))の3つの解が全て実数解(3つの異なる実数解)である場合の条件である。
(問題1の解1おわり)

【解2】
 式(1)の関数f(x)の3次方程式を関数g(x) にかかわる以下の式(2)に変形して、この問題を、関数g(x)の表すグラフy=g(x) と直線y=kxとの交点を求める問題であると解釈する。


y=g(x) のグラフとy=kxとの交点の数は、あるkの値で両グラフが接すると、その値よりも直線の傾きの値のkが大きければ交点の数が多く(3つに)なる。そのため、y=g(x) のグラフと直線y=kxとが接する場合のkの値kと、その接点のx座標とを求める。その接点では、式(3)であらわす曲線y=g(x) のグラフの傾きg’(x) がy=kxの直線の傾きkに等しくなり、以下の式(4)が成り立つ。
 先ずは、以下のように、式(2)と式(4)を連立して関数g(x) のグラフと直線y=kxとが接するkの値と接点のx座標とを求める。


 この方程式(5)を解くと接点のx座標が求められる。

-------〔注意点〕-------
 方程式(5)を計算すると接点のx座標を求めることができるが、方程式(5)のxの解が複数(例えば3つ)あれば、接点が3つあることになる。その場合は、その接点を与える直線y=kxの傾きkに応じて、方程式(2)単独でのグラフの交点の数が変わるので注意する必要がある。


-------〔注意点おわり〕-------

3次方程式(5)の解が接点のx座標である。
以下で、この3次方程式における3次式p(x) を因数分解する。(この設問は、この3次式p(x) が容易に因数分解できるように、問題が作られている。通常の場合では3次式の因数分解は容易ではない)
 このp(x) の式にx=1を代入するとp(1)=0になる。そのため、3次式p(x) は、(x-1)で割り切れることがわかる。

式(5)の解のx=1を式(4)に代入して、グラフが接する場合のkの値=1が式(7)で求められた。
 そのk=1の値で両グラフが接するので、その値よりも直線の傾きの値のkが大きければ、y=g(x) のグラフとy=kxとの交点の数が多く(3つに)なる。
 そのため、kの値が1より大きく(k>1)、kが式(8)の範囲になることが、3次方程式(式(1))の3つの解が全て実数解(3つの異なる実数解)になる条件である。
(問題1の解2おわり)

《補足》
 問題1の解2の方が、解1よりも簡単な3次方程式を解く解き方になり解き易かった。解1で解いた3次方程式も解けなければならない。(解2の3次方程式は、解1の3次方程式をxを介して表した、等価な3次方程式である)。微分を利用した解2の解き方の方が、解1よりも、計算の手順が少なく、解に至る手順がシンプルになった優れた解き方である。

《解2の解き方を一般の3次方程式に拡大する》
【課題】以下の3次方程式(式(1))の3つの解が全て実数解(3つの異なる実数解)である場合の条件を導き出せ。


(課題おわり)

【解2の解き方の一般化】
 式(1)の関数f(x)の3次方程式を関数g(x) にかかわる以下の式(2)に変形して、この問題を、関数g(x)の表すグラフy=g(x) と直線y=kxとの交点を求める問題であると解釈する。


y=g(x) のグラフとy=kxとの交点の数は、あるkの値で両グラフが接すると、その値よりも直線の傾きの値のkが大きければ交点の数が多く(3つに)なる。そのため、y=g(x) のグラフと直線y=kxとが接する場合のkの値kと、その接点のx座標とを求める。その接点では、式(3)であらわす曲線y=g(x) のグラフの傾きg’(x) がy=kxの直線の傾きkに等しくなり、以下の式(4)が成り立つ。
 先ずは、以下のように、式(2)と式(4)を連立して関数g(x) のグラフと直線y=kxとが接するkの値と接点のx座標とを求める。


 この方程式(6)を解くと接点のx座標が求められる。

この3次方程式における3次式p(x) が以下の場合(Case1とCase2)で因数分解できた場合は、それぞれの場合で、kの範囲が求められる。Case1の場合では、接点の条件が式(8)である。その結果、式(9)が、方程式(1)が異なる3つの実数解を持つ条件(解答)である。

Case1の場合は、式(9)の解になる。

(Case2)の場合のkの値の範囲が上記のようになる理由は以下の理由による。

-------〔Case2の理由〕-------
 kの解が3つある場合に、以下の図で示した関係がある。


-------〔Case2の理由おわり〕-------
なお、

となる(ここをクリックした先のページが参考になる)。上記のkの3次方程式は、式(4)を介して、式(6)のxの3次方程式と等価です。式(6)の3次方程式は、式(1)の解の個数が変わる境目のkの値を与える3次方程式を、xを介して解き易くした方程式であると位置付けられる。
(解2の解き方の一般化おわり)

《式(6)のxの3次方程式からkの3次式を導く》


最大の分母を式全体に掛け算する。

こうして、xを消去したkの3次方程式(10)が得られた。この式(10)は【課題】で計算したD3=0 の式と同じ式である。この式(10)よりは、式(6)の3次方程式の方が解き易かった。

【問題2】以下の3次方程式(式(1))の解が3つの異なる実数解になるkの値の範囲を求めよ。

(問題2おわり)

【解答】
 式(1)の関数f(x)の3次方程式を関数g(x) にかかわる以下の式(2)に変形して、この問題を、関数g(x)の表すグラフy=g(x) と直線y=kxとの交点を求める問題であると解釈する。


y=g(x) のグラフとy=kxとの交点の数は、あるkの値で両グラフが接すると、その値よりも直線の傾きの値のkが大きければ交点の数が多く(3つに)なる。そのため、y=g(x) のグラフと直線y=kxとが接する場合のkの値kと、その接点のx座標とを求める。その接点では、式(3)であらわす曲線y=g(x) のグラフの傾きg’(x) がy=kxの直線の傾きkに等しくなり、以下の式(4)が成り立つ。
 先ずは、以下のように、式(2)と式(4)を連立して関数g(x) のグラフと直線y=kxとが接するkの値と接点のx座標とを求める。


 この方程式(6)を解くと接点のx座標が求められる。
以下で、この3次方程式における3次式p(x) を因数分解する。(この設問は、この3次式p(x) が容易に因数分解できるように、問題が作られている。通常の場合では3次式の因数分解は容易ではない)
 このp(x) の式にx=1/4 を代入するとp(1/4)=0になる。そのため、3次式p(x) は、(x-(1/4))で割り切れることがわかる。

式(6)の解のxを式(5)に代入して、各接点のxの値に対応するkの値を計算する。


kの値の範囲の解が上記の範囲になる理由は以下の理由による。

-------〔kの範囲の解の理由〕-------
 kの解が3つある場合に、以下の図で示した関係がある。


-------〔kの範囲の解の理由おわり〕-------
(問題2の解答おわり)

リンク:
3次方程式が重根を持つ条件
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