2023年7月24日月曜日

複素数平面のベクトル方程式での垂心の導出

このページは、ここをクリックした先の問題の解答です。

 複素数平面であらわした複素数はベクトルです。
(実際、ベクトルPを複素数x+iyと等号で結ぶ表現をすることもあります。)

以下では、複素数平面上の複素数を用いてベクトルの内積の計算式をどの様に書けば良いかを、以下の問題を例にして説明します。

【問題1】
 複素数平面上で、原点0を中心にした半径Rの円がある。その円上の3点の座標を、複素数でα、β、γとすると、その3点が作る三角形の垂心の位置を表す複素数hを求めよ。


【解答1】

 問題を簡単化するため、半径1の円に内接する三角形ABCを考えます。

その円の中心を複素数平面の原点Oにし、点A,B,Cの複素数平面での座標をα、β、ɤとします。
上図の、複素数であらわしたベクトルa,b,cを考えます。
ベクトルa=ɤ-β,
ベクトルb=α-ɤ,
ベクトルc=α-β,
です。
点Aから垂心Hまでのベクトルをあらわす複素数は、実数kのパラメータを使って:
ik(ベクトルa)
であらわせます。
すると、
ベクトルBHとベクトルbが垂直なので、両ベクトルの内積が0になる方程式を作れます。
その方程式を、以下の様に複素数を使って解く事ができます。

これで、実数のパラメータkの値が得られました。
これをik(ベクトルa)の式に代入して計算します。
ここで、以下の、複素数平面の公式を使って計算を進めます。
(公式1)
 2つの任意の単位ベクトルに関して、以下の公式を導き出すことができます。

以下の式も成り立ちます。

この公式を使って、以下の計算をします。
この式を使って、ik(ベクトルa)の式の計算を続けます。
こうして、三角形の垂心の位置を表す複素数hをあらわす式を求める事ができました。
(解答1おわり)

【解答2】

 問題を簡単化するため、半径1の円に内接する三角形ABCを考えます。

その円の中心を複素数平面の原点Oにし、点A,B,Cの複素数平面での座標をα、β、ɤとします。
上図の、複素数であらわしたベクトルa,b,cを考えます。
ベクトルa=ɤ-β,
ベクトルb=α-ɤ,
ベクトルc=α-β,
です。

ベクトルBHをあらわす複素数は、実数kと実数sを使って2通りにあらわせます。
そのベクトル方程式を、以下の式のように複素数であらわす。(ベクトルcを複素数であらわす)。そして複素数計算での、ベクトルcとの内積の計算をする。それにより、ベクトルcに垂直なベクトルを除去し未知の実数sを除去して計算を進める。

これで、実数のパラメータkの値が得られました。

これを使ってベクトルAHを計算します。
ここで、解答1で示した公式1を使って、以下の計算をします。

この結果を使って、ベクトルAHの計算を続けます。

こうして、三角形の垂心の位置を表す複素数hをあらわす式を求める事ができました。
(解答2おわり)

(補足1)
 この解は、ベクトルで垂心位置を計算するときにとても苦労していた問題を、複素数平面の計算によって簡単に解けるようになったことを意味する。

(補足2)
 複素数平面のベクトル方程式f=0の計算のコツは、
0=Re((f)(g'))というふうに、式 f に、ある複素数gの共役複素数g'を掛け算した式の実数成分を求める式を作る。すなわち、複素数平面におけるベクトルfとベクトルgの内積を計算する。その式の中で掛け算するg'は、1/g にしても良い。1/g はgの共役複素数に平行だからである。
 それにより、式 f に含まれる、ベクトル g に垂直なベクトル成分を除去する。

【問題2】
 複素数平面上で、原点0を中心にした半径1の円がある。その円上の異なる3点A(α)、B(β)、C(γ)が作る三角形の点Aから直線BCへ下ろした垂線の足をH(ε)とする。点Hの位置をあらわす複素数εを、点A,B,Cの位置から導き出す式を求めよ。

【解答】


上図の、複素数であらわしたベクトルa,b,cを考えます。

ベクトルa=ɤ-β,
ベクトルb=α-ɤ,
ベクトルc=α-β,
です。

 ベクトルcは、ベクトルaと実数xの積のベクトルと、ベクトルaに垂直なベクトルと実数yの積のベクトルとの和であらわせる。ベクトルaを複素数aであらわす。
そのベクトル方程式とベクトルaの内積をとって、方程式から未知の実数yを除去して解く。

これで、実数のパラメータxの値が得られた。

これを使ってベクトルBHをあらわす式を計算する。

そして、点Hの位置をあらわす複素数εを計算する。

(解答おわり)

(補足)
  ここで、なぜ、

となるかを考察してみます。
その理由は、

となるからです。
それゆえに、

となるからです。
 公式は、あたりまえだ、と思うまで理解すると、覚えやすくなります。

リンク:
高校数学の目次
垂線の足までのベクトルの複素数の公式
複素数平面で三角形の外心を求める

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