2024年1月23日火曜日

複素数平面で三角形の外心を表す問2の解(その4)第6の形の解

これは、ここをクリックした先の問題の解答です。


【問2】
上図のように、三角形ABCの各頂点の複素数平面での座標をα、β、ɤとする場合に三角形の外心Pの座標をα、β、ɤ及びその共役の複素数であらわす式を求めよ。

【問2の解答(その4)】(第6の形の解)
 第6の解が得られる解き方は、以下の解き方が分かり易いです。
外心Pから三角形の頂点までの距離が等しい事から方程式を立てます。

この式4は、問3の式と同じ第6の形の式である。
(解答おわり)

 ベクトル方程式を使って、この解答(その4)の第6の形の式を求めようとすると、「ベクトルで三角形の外心を表す種々の式」【第33の解】のように面倒な計算が必要でした。ベクトルの計算では、解を表すために必要なベクトルとして、基準とするベクトルに直交するベクトルを新たに導入する必要性があったからです。それに対して、複素数平面を使った上の計算では、スンナリ解答を得る事ができました。

(補足3)
 なお、後の問3では、ベクトルが直交する事を確認して第6の形の式が三角形の外心の位置を表す式である事を証明しますが、それよりも、この解き方で外心を表す式を求めてしまった方が速く解答できるようにも思います。
 また、この第6の形の式を変形して、外心の特徴を解析し易い形をした第2の形の式に変換する計算は大変です。
 複素数であらわす三角形の外心の式を変換して各種の式を求めるよりも、外心のそれぞれの性質を元にして、各種の複素数の式を計算する方が速く外心の公式が得られると思います。

(補足4)
 解答(その1)の第2の形の式や、解答(その4)の第6の形の式を、ベクトルの計算で求める場合は、ここをクリックした先に書きました。

 複素数平面による解の式の表現のバラエティが広いため、ベクトル計算では苦労する解き方も、複素数平面を使うと比較的楽に解けるようになりました。

(補足5)
この解答(その4)の、第6の形の解を変形して、定石の形の解の式に変形してみます。

(交代式の変換の公式)
この、「交代式の変換の公式」を使って、以下の様に式を変形します。

(定石の形の解)
 このように定石の形の解に変形できましたが、この式の変形でも、交代式の変換の公式を使う等で、計算量が多いです。

 第2の形の解、すなわち、ベクトルBMとベクトルMPとに分けた式で表した解答(その3)の第2の形の解の式も、
定石の形の解答の式も、また、第4の形の解も、第5の形の解も、
同じ価値を持つ異なる形の解であると考えます。
その解の形の違いは、解をどの様な形で表すかの、解答者の意思の違いによって決まります。

 複素数平面の解の形(パターン)の発見・発案は、図形を考えて図形の定理を発見する事で得られます。(図形の定理が含む情報の方が、複素数の式が含む情報よりも豊か)
 複素数平面の問題を解く力は、図形の研究(相似な図形のパターンを発見して、それを複素数平面の複素数の式で記述する)によって強化されます。

(解説)
 解答(その4)の式4(第6の形の解)は、式の文字が交替している形で表されていて、一見してきれいな形をした式ですが、計算するべき積の数が多いので、計算に適用する元の式としては扱いにくい式であると考えます。
定石の形の式か、第2の形の式の方が、計算するべき積の数が少ないので、優れた解答の式だと考えます。また、第2の形の解の、解答(その1)の式15は、図形の平行移動や回転に対して解が正しく変化する事が明確にわかる形をしている優れた形をしています。
一方、第6の形の解の、解答(その4)の式4は、図形の平行移動や回転に対して解が正しく変化する事がハッキリしない劣った形をしています。

 問題を図形的に解いて、また、図形の平行移動や回転に対して解が正しく変化する事が分かる見通しの良い形をした解を求める事が望ましい解と考えます。

 問2の解答(その4)の式4から、問3の解答(その2)の計算をすることで、問2の解答(その1)の式15の形の式が得られます。しかし、その計算は計算量が多く、大変な計算です。

 図形の考察を優先して解を求めた問2の解答(その2やその3)でも、解答(その1)と同じ優れた解答が得られたので、解答(その2やその3)の解答方針は正しい解答方針だとわかりました。
 しかも、問2の解答(その2やその3)は、解答(その1)と同じ式を解答できる上に、解答(その1)よりも楽に解の式を導き出せ、解答に無駄が無い優れた解答方法です。

  解答(その2やその3)と解答(その1)の式15は、その式から解答(その4)の第6の形の式4を導き出す計算が比較的容易でした。
その計算が楽だった理由は、解答(その2やその3)及び解答(その1)の式15は、解答(その4)の第6の形の式4よりも多くの情報を含んでいる式であり、その情報を減らす計算だったので楽な計算になったと考えます。

 問題の解き方の発想の違いにより、意味の異なる、形が違う(互いに変換はできる)同じ式が得られる。そうして得られた式は、他の発想で解いて得た式から変換はできるが、その変換計算は結構面倒な計算だと分かりました。

 問題の解き方の発想(発案)が、問題を解いた結果の解答以上の価値を持つ場合があると考えます。どのように発案して問題を解くかという発案にこそ価値があると注意しましょう。その発案を豊かにするために、できるだけ「複素数平面のグラフをあらわす方程式を変換する問題は、複素数の計算をせずに、図形の考察で答えを求めるようにしましょう。」を行うよう、こころがけましょう。
 特に、複素数平面の複素数の計算は、この問題の例のように、わずらわしい計算を必要とする場合が多いと考えるので、そのわずらわしさを少しでも減らすために、図形の考察で解ける限り解くことを推薦します。

 この解答(その4)の第6の形の式4と、解答(その2やその3)の第2の形の式の間の相互の変換は、3つの複素数の交代式の簡単化公式2を覚えて使えば計算が楽になりますが、その公式2を覚えて変換するよりは、

(1)定石の形の解答の式の導き出し方と、
(2)第2の形の解答(その2やその3)の第2の形の式の導き出し方、
(3)第4や第5の形の解の式の導き出し方や、
(4)第6の形の解答(その4)の式4の導き出し方、
をそれぞれ覚えて、それぞれ独立に導き出す方が、迷いが無いので良いと考えます。

 同様な例として、「三角形の頂角の二等分線の長さに係る証明 」でも、発想の違いによる解き方によって、同じ解が異なる形で得られました。

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