2016年12月27日火曜日

空試行を考える確率の入試問題3の解答

これは、ここをクリックした先の問題の解答です。

【問1】
1個のサイコロを振るという試行を繰り返す。
奇数の目が連続して3回出るか偶数の目が通算して4回出たら試行を終了するものとする。
(1)この試行が6回以下で終了する確率を求めよ。
(2)この試行がちょうど7回で終了する確率を求めよ。
(2003年 上武大)


【解答】
(1)の解答:
先ず、以下のように、事象の連鎖を表現します。
奇数を1とし、偶数を0として、1回目から6回目までの事象の連鎖の種々の場合を以下のように表現します。
終了しない場合:
(1,0,1,0,1,0)
(1,0,1,1,0,1)

(終了する場合A)奇数の目が連続して3回出る
(0,1,0,1,1,1)
(終了する場合B)偶数の目が通算して4回出る
(0,1,0,1,0,0)

(問題の注目点)
(場合A)奇数の目が連続して3回出る。
(場合B)偶数の目が通算して4回出る。
この2つの場合の、場合Aや場合Bが生じて終了条件が満足された後でも、空試行を続けることにして、どの場合でも試行を6回まで行なうようにしてみる。そうしても、その6回の試行のどの連鎖であっても、場合Aと場合Bが同時に生じる事が無い、という問題の特徴があります。
 そのため、空試行を含む6回の試行においては、場合Aと場合Bとは、互いに独立して生じる事象の連鎖と考える事ができ、1つの場合毎に事象の連鎖の確率を計算して加え合わせる事ができます。

先ず、場合Bの確率が、場合Aの確率よりも求め易いので、先に計算します。

(場合Bの計算)
 この場合Bの確率は、以下の樹形図を書いて計算することができる。



(補足)
 この樹形図は、枝の分岐の割合が、太さが単純に2分の1なので、各枝の太さが簡単に計算できました。しかし、枝の分岐の割合が複雑な場合は、この図で各枝の太さの計算を繰り返すのが煩わしくなるので、要注意です。

(場合Bの優れた別解)
 そのため、以下の樹形図を書いて枝の数を数えて確率を計算する方が、計算を楽にします。(○は偶数、×は奇数です)

(場合Bの別解2)
 先に作った樹形図では、最細枝の太さが揃っていないので、計算が若干面倒です。そのため、以下の樹形図のように、通算4回の偶数が出た後で空試行をすることにして試行回数を6回にそろえる。
すなわち、通算4回の偶数が出た事象:
(0,0,0,0)
を、試行回数が6回の以下の事象の連鎖4つに分ける。
(0,0,0,0,0,0)
(0,0,0,0,0,1)
(0,0,0,0,1,0)
(0,0,0,0,1,1)
そうすると、事象の連鎖の糸(枝)の太さがどの場合でも同じになり、計算が楽になります。


この樹形図を使って場合Bの幹の確率は以下の式で計算できます。
(場合Bの解答おわり)

(空試行の意味)
 以上の解き方において、空試行を行なうやり方の空試行の意味を以下で説明する。
 試行が終了した後でも、試行が終了しない場合の数と比較できるようにするために、
試行が終了した場合も、試行が終了しない場合と同じ回数の空の試行を続けるものとする。
 それにより、6回までのあらゆる組み合わせで細分化した最細枝の数は2の6乗=64本になる。

 6回以下で終了条件(偶数通算4回)を満たす場合を数える部分樹形図を書く。条件を満たした後でも空試行を続ける。
 空試行も含めた6回の試行で、偶数が通算4回以上(奇数は通算2回以下)になるのが場合Bである。
 場合Bを6回の試行での奇数の通算数で場合分けして場合の数(最細枝の本数)を数える。 
 偶数(奇数)の通算数毎の、最細枝を成す6回の試行の事象の連鎖を以下に示す。

(1で奇数の事象を表し、0で偶数の事象を表す)
(0,0,0,0,0,0)  奇数が0個の事象の連鎖は1本。
(0,1,0,0,0,0)  奇数が1個の事象の連鎖は6本。
(0,1,0,0,1,0)  奇数が2個の事象の連鎖は、

6回の試行の事象の連鎖の総数は、

本ある。


 場合Bの部分樹形図を以下の図で書く。
この樹形図の場合の数(最細枝の数)に確率分の項を掛け算して場合Bの幹の確率を計算する。

(場合Aの計算)
 この場合Aの確率は、以下の樹形図を書いて計算することができる。
(補足)
 この樹形図は、枝の分岐の割合が、太さが単純に2分の1になったので、各枝の太さが簡単に計算できました。しかし、枝の分岐の割合が複雑な場合は、この図で各枝の太さの計算を繰り返すのが煩わしくなるので、要注意です。

(場合Aの優れた別解)
 そのため、以下の樹形図を書いて枝の数を数えることで、計算を楽にします。(○は偶数、×は奇数です)
偶数でも奇数でも良い場合をTとします。その場合の確率は1です。
上図の4つの場合は:
X,X,X: 確率は(1/2)の3乗
○,X,X,X: 確率は(1/2)の4乗
T,○,X,X,X: 確率は(1/2)の4乗
T,T,○,X,X,X: 確率は(1/2)の4乗
上図の4つの場合をチェックして、 
偶数(○)が通算4回に達する場合が無いことを確認した。

(場合Aの別解2)
 別解2として、試行が終了した後でも、試行が終了しない場合と比較できるようにするために、試行が終了した場合も、試行が終了しない場合と同じ回数の空の試行を続ける場合の樹形図を考えてみる。
(場合Aでは、残念ながらこの別解2は、かえって解き方を難しくする)
その場合Aの部分樹形図を以下の図で書く。
(注意)1つのイベントの結果の事象が奇数であるか偶数であるかを定めない最細枝(糸)の本数は、そのイベントの事象のバラエティに従って、事象が不定なイベント毎に2倍になる。
 ここで、
(1)6回行なう全部の組み合わせの数は2の6乗あります。
(2)偶数でも奇数でも良い場合をTとします。その場合の数は2です。
(3)上図の4つの場合は:
X,X,X,T,T,T: 組み合わせの数は2の3乗
○,X,X,X,T,T: 組み合わせの数は2の2乗
T,○,X,X,X,T: 組み合わせの数は2の2乗
T,T,○,X,X,X: 組み合わせの数は2の2乗

上図の4つの場合の確率は:
X,X,X,T,T,T: 確率は(1/2)の3乗
○,X,X,X,T,T: 確率は(1/2)の4乗
T,○,X,X,X,T: 確率は(1/2)の4乗
T,T,○,X,X,X: 確率は(1/2)の4乗

 この4つの幹が分離されていて、それぞれが同時に生じることが無い、独立した組み合わせである事を確認するため、この4つの幹の構成をあらわす樹形図全体を、3回目の事象の分離から始めた下図の樹形図であらわした。
 この樹形図によって、この4つの幹はきちんと分離されていて、それぞれが同時に生じることが無い、独立した組み合わせであって、数え上げに重複が無いことが確認できた。

 場合Aの、この部分樹形図のこの4つの幹(最細枝の束)の確率は、以下の値になる。
上図の4つの場合をチェックして、 
偶数が通算4回に達する場合も無いことを確認した。

(場合Bと場合Aの確率の和の計算)
 次に、場合Bと場合Aの確率を足し合わせて(1)の解答の確率を計算する。
((1)の解答おわり)

【(2)の解答】
先ず、Aの場合の確率を計算します。
次に、Bの場合の確率を計算します。
ここで、奇数の連続3回で終わってしまう場合を除外する注意をします。偶数の目が通算4回出るが、一方で奇数が連続3回出てしまう場合は、以下の4通りです。
上の4つの場合を除外した模様の数に確率分を掛け算して、Bの場合の確率を以下のように計算します。
次に、全ての場合を足し合わせて(2)の解答の確率を計算します。
(解答おわり)

(補足)解答を計算する場合に、解答の条件を外れる場合を除外して計算する注意が必要です。
 また、この問題では具体的にはあらわれなかったが、重複した数え上げを除外して計算する注意が必要です。

 リンク:
確率の問題を空試行を考えて解く
高校数学の目次


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